怪奇異譚・吸血鬼口伝

【あらすじ】

脚本家、内田カンナはここ最近アイデアが浮かばず、いわゆるスランプ状態であった。気分転換に、あまり乗り気ではなかった母方の実家へ帰省することになったカンナは墓参りにも行かず、部屋に篭ってパソコンと格闘するばかり。それに見兼ねた姪(甥)っ子ユウは作業中のカンナをものともせずかくれんぼを始める。ユウを探しに押入れを調べ始めたカンナは、1冊の本を見つける。その時、空が荒れ稲妻が降り注ぎ彼女の前に現れたのは、かつて「吸血鬼」と呼ばれた曾祖父だった___

  【登場人物】

  

  内田カンナ(うちだ かんな)…脚本家。スランプに陥っており、神経質がさらにピリピリしている。ラブロマンスが得意だが、本人の恋は実らず。

  

  雛森ユウ(ひなもり ゆう)…カンナの姪(または甥)っ子。かんねーちゃんと呼んで慕う小学2年生。怖いもの知らず。

  

  

  雛森 重三郎(ひなもり じゅうざぶろう)…13代目雛森家当主にして、「吸血鬼」と呼ばれた男。ユウからはジュウザと呼ばれる。自分の伝記を書いて欲しくて成仏できない。

  

  

  吸血鬼(きゅうけつき)…重三郎の若い頃。結構やんちゃしてたらしいが、自分で誇張した部分がほとんど。

  

  むつ…重三郎の屋敷に仕えていた侍女。生まれつき体が弱い重三郎の良き遊び相手でもある。

  

  桐生 統(きりゅう すべる)…桐生家の御曹司。重三郎とはライバルとも因縁の相手とも呼べる関係。吸血鬼と呼ばれる原因を作った本人。

【本文】

  

  「これから語られるは、吸血鬼の物語…」

  

  「ヴァンパイア、カーミラ、そしてドラキュラ…人の生き血をすすり、悪魔に魂を捧げたと言われた吸血鬼。しかし、これは異譚である」

  

  

  「目覚めよ、血に飢えた悲しき者よ」

  

  

  カンナ「(怪物のような呻き声)」

  

  逢魔が時。部屋に机に向かって1人篭るカンナ。しばらくしてケータイが鳴る

  

  編集「お疲れ様です。編集の久留米です。もしもし内田先生?聞こえてます?もしもーし?」

  カンナ「…」

  編集「あのー、お盆で実家に帰省するのはいいんですけど、原稿進んでますかね?できたらYメールで送ってくださいね。先生?」

  カンナ「(ため息)…」

  編集「聞こえているなら返事くらいしてくださいよ!子供じゃないんだから!」

  カンナ「…はい」

  編集「じゃ、また連絡するんで、原稿お願いシマース」

  

  ブチッ

  

  カンナ「このやろう…」

  

  再び机に向かう内田カンナ(以下、カンナ)

  

  カンナ「あーもう何にも思いつかん!無理!どう足掻いても無理!」

  

  突然、部屋のドアを開けて子供が飛び出してくる

  

  ユウ「ぶぅうううん」

  

  カンナ「…ユウ」

  ユウ「カンナねーちゃん、遊ぼ?」

  カンナ「遊びたいんだけどさぁ…仕事がさぁ」

  ユウ「終わんないの?ぶぅうううん」

  カンナ「それ何?」

  ユウ「シュバルツのシャドゥブレイクだよ。ぶぅうううん」

  カンナ「へぇ…」

  ユウ「仕事終わんないの?つまんないな〜」

  カンナ「…ちょっとだけなら遊んであげるよ」

  ユウ「え!ファンタジッククエストごっこしよ!」

  カンナ「えぇ…?ファン?え?ファンキー?」

  ユウ「ファンタジッククエスト」

  カンナ「ファンタジッククエストは分からないなぁ」

  ユウ「…じゃあかくれんぼするから鬼やって。目隠しして10秒数えたらスタートね」

  カンナ「えっ ちょっ待っ…」

  

  即座に走り出すユウ

  

  カンナ「いーち、にーい、さーん、しーぃ…ごーろくしちはちきゅうじゅう…もういいかい?」

  ユウ「(遠くから)もういいよ」

  カンナ「案外早いな。じゃあ探すからね〜 」

  

  テキトーに部屋の中を探すカンナ。

  本棚の古い書物に目が止まる。

  

  カンナ「…なにこれ。日記?へぇ…」

  

  パラパラと読んでいくうちに、外の天気が悪くなる。

  ふと、隣の押入れの戸に気がつく

  

  カンナ「おっと、ここかぁ…?みーつけたっ!」

  

  戸を開けると同時に雷が鳴り響き、老人が現れる。

  

  間。

  

  戸を閉める。

  

  カンナ「いやいやいやいやいや」

  

  もう一度開けて、老人の顔を確かめる。

  もう一度閉める

  

  カンナ「いやいやいやいやいやいや」

  

  もう一度開けて閉めようとする

  

  重三郎「さっさと開けんか」

  カンナ「ええと、ここでどうされたんですか?」

  重三郎「どうもこうもないわ。ここから出られんのだ」

  カンナ「出ればいいじゃないですか。あの、杖とか入ります?」

  重三郎「そうじゃなくて!」

  カンナ「うちのひと呼んでくるんで、救急車とか必要ですかね?それと警察も」

  重三郎「うちのひとは俺のことだ」

  カンナ「は?」

  重三郎「この家の者だと言っている」

  カンナ「いいから、お家に帰りましょうね?」

  重三郎「ちがーう!いいか、俺は雛森家13代目当主、雛森重三郎」

  カンナ「えっえっ?もしかして、親戚の方…?」

  重三郎「うむ。そう、なんだろうか?お前はユウの姉か?」

  カンナ「ユウを知ってるんですか?」

  重三郎「知ってるも何も…小さい頃から知っておる。もしかしてユウの姉か?」

  カンナ「いえ、 私はユウの叔母で…ちょっと待ってください。重三郎って…ひい爺ちゃん…」

  重三郎「ああもうそうなのか…気持ちはここだが、骨はあの先祖代々の墓に納められている」

  カンナ「ゆう…れい」

  

  ユウ「カンナおねーちゃん!」

  カンナ「あっユウ見つけた!アウト!」

  ユウ「もー!ジュウザの声がしたから来たんだよ!今のはタイム使ってるから!」

  重三郎「ユウ、この子があの…」

  ユウ「そうだよ。カンナねーちゃん。本を書く仕事をしてるの」

  重三郎「なるほど。そういうわけか…」

  カンナ「…使えるかも」

  ユウ「カンナねーちゃん。ジュウザの夢、叶えてあげてよ」

  カンナ「えっ?」

  ユウ「ジュウザの本をね、書いてほしいんだって」

  重三郎「そうだ。カンナ先生に折り入って頼みがある」

  カンナ「そんな、先生だなんてひいじいちゃん…」

  重三郎「俺の成仏の為に、この雛森重三郎の伝記を書いて欲しい」

  カンナ「…いいですとも」

  

  

  ♪〜(op)

  

  

  重三郎が座りその横でノートにメモをとるカンナ。それを隣で聞くユウ

  

  僧侶を先頭に参列する人々。俯いたまま、鈴の音とともにある場所へ向かっている。

  それに続いて歩きながら吸血鬼、むつ、登場。

  

  吸血鬼「むつ、そこにうさぎがいる」

  むつ「ぼっちゃん!」

  吸血鬼「真面目だなあ、むつは。こんなの歩き疲れるだけだろう。年寄りが可哀想だ」

  むつ「ぼっちゃんもいずれ旦那様の跡を継げばあの先頭の方で歩くんですよ」

  吸血鬼「そうかい。むつが継いでくれればいいのに」

  むつ「私は継げません」

  吸血鬼「大真面目だねぇ」

  むつ「大真面目ですよ」

  吸血鬼「…帰ったら花札の続きだぞ」

  むつ「はいはい」

  

  茂みからガサッと音がし、

  視線を感じるむつ

  

  吸血鬼「どうした?」

  むつ「いま、誰か…」

  吸血鬼「見られたのか?」

  むつ「様子を見てきます」

  

  参列とは反対方向へ走るむつ

  

  吸血鬼「むつ!」

  

  後を追う吸血鬼

  

  参列者達は無言のまま進んでいく

  

  カンナ「そんなことやってたの?」

  重三郎「昔はよーくやったんもんだ…先祖の魂と共に墓から家まで一緒に歩くのさ。この家ではそれが当たり前だった」

  

  むつが追いかけた男を追い詰める

  

  むつ「なぜ、逃げる」

  男「お前ら…人の骨を…」

  むつ「見たのか。家の者以外は領内に入らぬ掟であろう」

  男「ば、化け物め!!雛森の人間は皆化け物だ!」

  むつ「貴様…!」

  吸血鬼「むつ!」

  むつ「ぼっちゃん?!」

  

  その隙を見て逃げる男

  

  吸血鬼「…殺そうとしたのか?」

  むつ「そんなつもりじゃ」

  吸血鬼「だめだ。殺しは良くない」

  むつ「悔しくないのですか?化け物だなんて…」

  吸血鬼「そんなことどうでもいい。帰ろう、むつ」

  むつ「……」

  

  しゃがみ込む吸血鬼

  

  むつ「ぼっちゃん…?」

  

  チカチカと点滅し、ブラックアウトする

  

  むつ「ぼっちゃん!」

  

  

  

  むつ「ああ…ぼっちゃん!お目覚めになられましたか…」

  吸血鬼「あ…」

  むつ「ああっ!お体に障ります…」

  吸血鬼「お前は大丈夫なのか?」

  むつ「私は大したことありません」

  吸血鬼「(懐中時計を見る)これは怒られるな…」

  むつ「罰なら私が受けます。私のせいです」

  吸血鬼「いいんだ。一緒に怒られに行こう」

  

  重三郎「…あのあと、親父にげんこつで殴られたんだ」

  ユウ「いたいよー」

  重三郎「痛かったなぁ…隣にいたむつはどこかに連れてかれて、しばらくしたら顔を真っ赤に腫らせて帰ってきたんだ」

  ユウ「かわいそう!」

  重三郎「可哀想だよなぁ…あの時、ジュウザはどうすることも出来なかったんだ」

  カンナ「…今じゃモンスターペアレントとか呼ばれそう。体罰なんてもってのほかよ」

  重三郎「ユウは痛い目にあってないかい?」

  ユウ「あってないよ。大丈夫だよ」

  重三郎「それなら良かった」

  カンナ「1つ、ひっかかるんだけどさ。化け物って…どうゆうことなの?」

  重三郎「化け物はやっかいなあだ名でな。村の罪人や都会から送られてきた罪人を斬る仕事が親父の仕事だった。俺はそれを毎日見ていた。いつか自分がその仕事を継ぐために。しかしある日…」

  

  学校の教室。放課後、帰ろうと荷物をまとめる吸血鬼

  そこに、桐生が駆け寄ってくる

  

  桐生「君が噂の化け物くん?」

  吸血鬼「…」

  桐生「ああ、ごめん、ごめん。僕は桐生統。知ってるだろう?」

  吸血鬼「知らない」

  桐生「でも僕は君をよく知っているんだ。なぜだと思う?」

  吸血鬼「…」

  桐生「執行人ってどんな気持ちなんだ?猫やカラスのように死肉を貪るのか?芥川の羅生門のようにかつらにするのか?」

  

  教室が桐生の言葉にざわめく

  

  吸血鬼「(いきり立って)何なんだお前は。騒ぎたいなら校庭で騒げ」

  桐生「罪人を裁くってどんな気持ちなんだ?正義が湧いてくるのか?」

  吸血鬼「やかましい!」

  

  桐生の襟元に掴みかかる吸血鬼

  教室が静まり返る

  

  桐生「僕を裁きたければ、裁くがいい。必ず君の正体をあばいてやるよ、また会おう吸血鬼…」

  

  不敵な笑みを浮かべながら、教室を去る桐生

  

  重三郎「これが、桐生統との最初の出会いだった」

  カンナ「最悪」

  ユウ「ばけものってカオスギャラクシードラゴンってこと?」

  重三郎「えぇ?」

  カンナ「それとはまた違うと思うけどさ…」

  重三郎「あいつは村の掟を破っては親父の仕事場を盗み見ていた。桐生はとりわけ成績も良いがその分好奇心も強く、皆は畏敬の念を抱いていた…だから、彼の言葉を信じるしかなかった」

  

  

  返り血を舐める吸血鬼

  それを遠目で見る桐生

  

  桐生「これは…吸血鬼だ!」

  

  

  カンナ「それだけで?」

  重三郎「そうだ」

  カンナ「血、舐めただけで?」

  重三郎「そうだ」

  カンナ「そんな…」

  重三郎「褒められるような仕事をしているわけじゃないが、必要な事ではあったんだ。それが到底全ての人に理解できるとは思っていなかった。桐生が分からなくて当然だと思っていた」

  

  桐生「吸血鬼が人間に戻るために僕はどうしたらいいと思う?」

  吸血鬼「俺に聞くな」

  桐生「馬鹿か。『無論、政治家になるべきで有ります』と云えばよいのだ」

  吸血鬼「はあ?」

  桐生「晴れて僕は吸血鬼退治をした政治家として世に知らしめる。その時は僕がお前を裁判にかけてやる」

  吸血鬼「…俺の家の仕事がそんなに気に入らないのか」

  桐生「そうだとも。例えお上の命だろうとお前達がやってるのは人殺しと同じだ。それなのに罪に問われない。だが、みんな黙って誤魔化してる」

  吸血鬼「…」

  桐生「その流れてる血が、吸血鬼であるかはたまた人間なのかどうかを暴いてやる」

  吸血鬼「勝手に吸血鬼と決め付けたのはお前だ、桐生」

  桐生「残念。お前は、自覚が無いだけだよ」

  

  重三郎「そう言い残して、桐生は学校を卒業し、大学へ進学した。と同時に親父の容態が急変し、俺に仕事を継がせると言い残してこの世を去った」

  

  雛森家の葬式後。雨が降っている

  

  むつ「当主様…これからはもう、ぼっちゃんではありません。雛森家の人間として」

  吸血鬼「もう何遍も聞いた」

  むつ「まさかこんな早くに当主になるだなんて…この世は残酷です」

  吸血鬼「仕方ないことじゃないか」

  むつ「そう、ですね…。ああ、本当にご立派になられて」

  吸血鬼「おい。子供扱いしないと言ったのは誰だ」

  

  重三郎「当主になってからは早速仕事が舞いこんできた」

  

  

  民衆「バンザイ!バンザイ!バンザイ!」

  

  ざわめく民衆の中から軍人達に連行されてきた人が次々と吸血鬼の前に躍り出る

  

  政治家「この国は間違っている!国民に武器を持たせ弾薬を積ませ、死なせることの何が幸福か!この国は真っ事不幸の国である!この国は____」

  

  言いかけ、吸血鬼が手にかける

  

  外交官「私はこの国の平和の為に仕事をしてきた。しかし、国は私を殺そうとしている。もう何が正しいかも___」

  

  役者「芝居で嘘か真かもわからない連中に斬られるよりかは、あんたみたいな何も知らない無垢な顔をして綺麗に斬ってくれる方が随分いいよ。いい本ができる。ただ、この後死ぬんじゃあ勿体無いがねぇ___」

  

  新聞記者「あんたが例の化け物かい。充分さ。国に協力して人殺しに加担するよりか、ここで殺された方が幾分もマシだ。立派な罪人として斬られてやるよ。それがあんたの仕事だもんな」

  

  吸血鬼「分かったような口を…」

  

  手が震える吸血鬼

  その手をむつが支える

  

  むつ「当主様はご立派に仕事をやり遂げています。当主様が手にかけるからこそ、意味があるのです。ここで止めてはなりません。さあ、おやりなさい」

  

  返り血で真っ赤に染まった吸血鬼の顔。

  息は荒く、落ち着かせるように自分の顔にべったりとついた血を舐める

  

  民衆「バンザイ、バンザイ、バンザイ!」

  

  民衆の歓声と人を斬り続ける音がフェードアウトしながら暗転。

  

  

  カンナ「……」

  重三郎「ちょっと重かったかな。」

  ユウ「ううん、平気」

  カンナ「……」

  重三郎「真剣に書いておるな。関心関心」

  ユウ「ジュウザは…辛くないの?」

  重三郎「随分昔の事だからなぁ…もう古い思い出としか言えないんだ」

  カンナ「…ねぇ、これを外に漏らしていいわけ?」

  重三郎「その為の伝記だ、続けるぞ」

  カンナ「……」

  

  

  むつ「当主様、お顔が優れませんね?」

  吸血鬼「…」

  むつ「当主様?」

  吸血鬼「むつ、汚れがとれないんだ」

  むつ「お召し物ですか?すぐに洗濯を__」

  吸血鬼「手が、何度やっても、とれないんだ、むつ」

  むつ「…これからは手袋を着けた方がいいかもしれませんね。こちらへ」

  

  突然、ドアをこじ開けて桐生が入ってくる。ボロボロの軍服に浅黒く焼けた肌になっていた。

  

  桐生「よう、生きてたか?」

  吸血鬼「桐生…?」

  桐生「僕も、化け物になっちまった。なぁ、まだあの仕事を続けてるのかよ。もうやめねぇかい」

  むつ「外部の人間に家の事をとやかく言われる筋合いはございません。お引き取り下さいまし」

  桐生「あんたに言ってるんじゃない。雛森重三郎に言ってるんだ」

  吸血鬼「俺は…」

  むつ「お引き取り下さい!」

  桐生「言っただろう吸血鬼、お前を裁いてやるって」

  むつ「来るな!来るなら殺す!」

  桐生「裁きに来たし、裁かれに来たんだ。僕は戦争でたくさんの人を殺した」

  

  むつと桐生が刺し違える。

  桐生がにこりと笑い、むつは怒りに悶える

  

  桐生「これで、お前は自由だ」

  

  桐生がむつの体に倒れかかる

  呆気にとられた吸血鬼は遅れて側へ駆け寄る

  

  むつ「ぼっちゃん…」

  吸血鬼「むつ、むつ!」

  むつ「ぼっちゃん、いいのです…私は、ぼっちゃんの幸せの為に…」

  吸血鬼「むつ…!」

  

  吸血鬼「桐生、俺を裁いてくれ!人の生き血をすすり、悪魔に魂を捧げた俺を!この手の汚れが落ちないんだ!なんとかしてくれ!!桐生!!」

  

  怪物の様な呻き声がこだまする

  

  

  重三郎「…近くの川では、明け方赤く染まっていて。吸血鬼が吸いこぼした血が麓の村まで流れていたそうな」

  カンナ「…刺激強すぎ」

  ユウ「ちょっとトイレ!」

  

  ユウが逃げるように部屋を出る

  

  カンナ「どこからどこまでが真実なの?」

  重三郎「嘘かどうかはその時代の人間にきいてくれ」

  カンナ「はぁ?何それ?」

  重三郎「言ってみたかったんだ」

  カンナ「これじゃあ伝記というより怪談でしょ?!」

  重三郎「若い頃はやんちゃしてたからなぁ…」

  カンナ「なーにすっとぼけてんのさ。…全然吸血鬼なんかじゃないじゃない。どこからどう見ても私のひいじいちゃんでしょ…」

  重三郎「カンナ、ありがとうよ」

  カンナ「はぁ〜疲れた!話長すぎて腰痛くなってきた…」

  ユウ「ふー!スッキリ!…あれ、ジュウザは?」

  カンナ「え?さっきまでいたんだけど…」

  

  ジュウザの姿が消えていることに気づく2人

  

  カンナの母「(遠くで)カンナー!ユウちゃーん!みんなでお墓参り行くよー!」

  ユウ「はーい!カンナねえちゃん、行こ!」

  カンナ「うん。行こ行こ!」

  

  部屋から出ていく2人。

  それを見守る重三郎

  

  残った原稿に目を通し、幕。