【あらすじ】
心は食べられるし、売るものの 世界で、
商売心に火をつけた。
(ショウ-バイゴコロ)
商人が道行く人に声をかけるが、いっこうに売れる気配がない。
商人「今日もとれたて!新鮮な心がこの秋限定モデルで販売中です!心、心はいかがですか?」
商人「今ならあなたの冷めた心を暖めるホッカイロもついてサンキュッパ!」
商人「お姉さん、心!どうですか?え?もう持ってる?失礼しました!また欲しくなったらいつでもお待ちしております!」
商人「お兄さんお兄さん!新しい心、いかがですか?お兄さん!お兄さーん…」
商人「はぁ…全然売れない…これじゃあ親方に怒られちまう」
商人「もう誰でもいいから買ってくれないかな…」
商人「今日もとれたて!新鮮な心がこの秋限定モデルで販売中です!心、心はいかがですか?」
一人、客が立ち止まる
商人「あっ!お客さん、どうですか?とれたてピチピチ限定モデルですよ…?」
客人「…」
商人「もしよろしければ、ひとくち試食でも…」
試食にがっつく客人
商人「…どうです?」
客人「ください」
商人「ありがとうございます!」
客人「いくらですか?」
商人「サンキュッパです!」
客人「サンキュッパ…?」
客人「じゃあ、ここにあるの全部で」
商人「えぇ?」
客人「えぇ?」
客人「こんなに美味しいのに…誰も買わないなら僕が買います」
商人「いや、いいんですけど…そんなにたくさんどうするつもりですか?」
客人「どうするもこうするも僕の勝手でしょ?」
商人「もしかして流行りの爆買いですか?」
客人「別にそんなつもりは…」
商人「いるんですよ、心を大量に買い込んでは高額で取引して…心を弄んでるんですよ」
客人「僕は純粋に心が欲しくて買いたいだけですよ!一緒にしないでください。さ、お会計」
商人「いえ、そのまえに販売者としてひとつ。その心を何に使うんです?」
客人「だから、僕の勝手…」
商人「これは義務です。購入者が悪用しない為に必ず聞いています。…それとも、言いづらい事なんですか?」
客人「こんなこと言いたくないんですけど、小さい頃貧乏で…」
客人「空腹を凌ぐために親が自分の心を売ったんです。そして自分の心も…それからもう一度心を買うのに時間がかかりましたが…」
客人「大人になってあの時の自分を助けたい訳じゃないんですけど当時のスキマをその心で埋めたいんです…母さんの暖かい心とか…家族との団らんも夢じゃないんです」
商人「分かった…分かったよ。全部タダでやるよ」
客人「えぇ?」
商人「こんな事聞いたらタダじゃなきゃダメだろ!ほら!」
客人「いいんですか…?」
商人「…気が変わる内に早く家族の元へ持ち帰りな…賞味期限が切れちまうだろ」
客人「ありがとうございます!」
商人「まいどあり!」
客人「でも…やっぱりタダはだめだと思うんです!」
商人「えぇ?」
客人「そういえば、あなた『心を弄んでる』って言いましたよね?タダで売るってことは、心を軽くみてるんじゃないですか?」
商人「いや、だからあなたの話を聞いて…」
客人「あなたはそれで安安とタダにしたってことは元々廃棄処理で売ってるってことじゃないんですか?」
商人「それは…」
客人「どうなんです?そんな棚で売ってて商品の扱い方がなってないと思うんですけど」
商人「あー!あー!もう!私の売り方にケチつけるってのかい!うちはね、店頭販売をウリにしてるの!わざわざ新鮮な状態で外に出してるの!商品ケースにサンプル並べてる店と一緒にしないで欲しいんだけど?」
商人「それに廃棄処理の心を売るなんて口にしたね!営業妨害にも程があるよ!そんなに嫌なら買わないでくれる?あっ…」
客人「…」
商人「す、すみません…お客様には大変失礼致しました」
客人「…熱い心を持ってるじゃないか」
商人「へ?」
客人「いいでしょう。僕はこういうのを待ってたんです。あなたの心、買います!」
商人「お客様、私の心は売り物ではないので…」
客人「いや、特別に売ってくれないかな。高く買いとるんで」
商人「そういう問題じゃないです!」
客人「あっ!逃げないでください!!」
商人「こ、ころさないでぇ!」
幕
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